メカトロニックなカメ

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いろいろな減衰

前準備

\(\boldsymbol{M}\)を質量行列、\(\boldsymbol{C}\)を減衰行列、\(\boldsymbol{K}\)を剛性行列、\(\boldsymbol{x}\)を位置ベクトル、\(\boldsymbol{f}\)を外力ベクトルとしたとき多自由度振動系の運動方程式は次式のように表される。

\begin{align} \boldsymbol{M}\cfrac{d^2\boldsymbol{x}}{dt^2}+\boldsymbol{C}\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}+\boldsymbol{K}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{f} \end{align}

上式のように表される減衰は速度に比例した減衰であり、最も一般的な減衰モデルである。しかし、減衰は運動する物体の形状や減衰力を生み出す流体の粘性などで大きく変化する。それらについてまとめてみよう。

速度比例減衰

前準備で示した減衰は速度に比例した減衰であるため、速度比例減衰と呼べる。この減衰の場合、モデルは線形微分方程式であるため非常に扱いが容易である。

\begin{align} \boldsymbol{f}_c=-\boldsymbol{C}\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt} \end{align}

この減衰モデルで表せる条件は、運動の周りの流体が層流であることである。つまりレイノルズ数が小さいことが条件である。レイノルズ数\(\textrm{Re}\)は代表長さ\(L\)、代表速度\(U\)、動粘性係数\(\nu\)、流体密度\(\rho\)、粘性係数\(\mu\)を用いると次式のように表されます。

\begin{align} \textrm{Re}=\cfrac{LU}{\nu}=\cfrac{LU\rho}{\mu}\end{align}

上式からさらに言い換えると速度が小さくて、動粘性係数が大きい場合にこの減衰が適用可能である。

速度二乗減衰

レイノルズ数\(\textrm{Re}\)が大きくて、物体の周りの流体が乱流となる場合、減衰力は速度の二乗に比例するとされている。 

\begin{align} \boldsymbol{f}_c=-\boldsymbol{C}\left|\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}\right|\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt} \end{align}

速度が大きい範囲、動粘性係数が小さい場合にはこの減衰力モデルを用いることとなる。振動を扱う際は微小振動に着目することが多いため、この減衰力モデルを用いることは少ない。しかし水中など動粘性係数が小さい場合にはその限りではない。

 

クーロン摩擦減衰

上記で示した速度比例減衰や速度二乗減衰は流体と物体との摩擦を意味しており、摩擦と減衰は言葉は違うが、厳密には同じである。クーロン摩擦は一般的に動摩擦と静摩擦と呼ばれるもので、垂直抗力を一定とすると次式のように表される。

\begin{align} \boldsymbol{f}_c=\left\{\begin{array}{ll}-\boldsymbol{F}_d\textrm{sgn} \left(\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}\right)&\textrm{if }   \cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}\neq 0\\-\boldsymbol{F}_s&\textrm{if }\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt}=0\end{array}\right. \end{align}

厳密には上記よりも複雑な式となるが、上記で充分なことが多い。

 

レイリー減衰

比例粘性減衰とも呼ばれ、質量行列と剛性行列に比例した減衰である。

\begin{align} \boldsymbol{f}_c=-\left(\alpha\boldsymbol{M}+\beta\boldsymbol{K}\right)\cfrac{d\boldsymbol{x}}{dt} \end{align}

この減衰はモード分解する際に非常に都合の良い減衰力モデルである。解析用の減衰力モデルといえる。

 

ヒステリシス減衰

履歴減衰、構造減衰、複素剛性とも呼ばれ、ゴムなど高分子化合物でよくみられる特性である。このモデルの特徴として、変位に比例した減衰力が働くことであり、ゴムを伸縮させたときに発生する熱を表すモデルである。上記のように一般的な数式で表すことができず、周波数特性の時に次式のような近似式を用いられる。

\begin{align} \boldsymbol{f}_c=-\boldsymbol{K}\left(\boldsymbol{I}+i\boldsymbol{G}\right)\boldsymbol{x} \end{align}